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王様の仕立て屋~下町テーラー~の最新話『23話』のネタバレや感想、考察を
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王様の仕立て屋~下町テーラー~の最新話『23話』のネタバレ
「池端流」の先生
智坂は学校で華道の授業を選択しています。
教えてくれる先生・池端は、
すっきりとした日本的な美男子で、生徒にも好評。
最近服の仕立てを見続けているだけあって美意識が
向上した智坂の作品にも目ざとく気づいて褒めてくれました。
「細かい気配りの習慣は人間関係をよくしてくれる」
その心構えを忘れないでと智坂に説くのでした。
一方ケメ子はあまり池端に関心がないようです。
どうも古き良き日本人の骨格、
和服が似合うなで肩の悪く言えばなよなよした風体が好みではないのだとか。
「池端流とか聞いた事がねえけどな」と不思議そうな悠に対し、
何でも戦国時代から続く由緒正しい流派だが
震災や戦争で幾度も没落しかけた過去があったのだとか。
「伝統を継承するのも大変だよなあ」と悠は何気なしに言いますが、
これはナポリの職人達・スーツの世界でも言えることでしょうね。
外見もですが、内面も細かすぎて、
何かとんでもない裏を持っていそうだから気をつけろとさえ忠告します。
しかし悠は「尊敬できる大人に出会えるのは良いこと」と
下手な勘繰りをよすように諭します。
…ところかわって池端流家元の家。
そこでは人が変わったようにうっぷんを叫ぶ池端の姿が!
「生徒め!」「素人が!」
床を転げまわり絶叫する彼を、弟子が慰めます。
彼にとっては学校の選択授業は苦痛でしかたないのです。
特に興味もなく雑に花を切って飾りたてるだけの生徒は
彼の美意識に反します。
「やり甲斐のある現場で感性を整えないと勘が狂ってしまいそうだ」
なにか大会社のパーティなどで
自分の力が発揮できないか模索していますが、都合のいい話はありません。
先祖が華族の指導をしていたという立派な流派である池端流。
このまま消滅してしまうのか?
鬱々とした気分の家元に、一本の電話がかかってきます。
それは友人・石山からの連絡。
海外投資家の懇親会で、演出の代表をやってみないか
との相談だったのです。
なんでも石山はオランダのイベントに招待されて
こちらの仕事をキャンセルするしかないらしく
同業の友人にチャンスを回してくれたのです。
喜んだ池端は一も二もなく同意しますが…。
弟子は懸念を口にします。
「そのホテル側が求めているのは洋風のデザインで伝統的な華道は畑が違うのでは…」
確かにフラワーアレンジメントと華道では、
共通する部分もあるとはいえ、大分雰囲気が異なります。
ですが池端は洋風の研究もかかしていなかったから大丈夫と
随分前向きに考えている模様。
さっそく打ち合わせの準備を行うのですが――。
後日。高校の廊下を歩いている智坂の前に、
息せききった家元が現れました。
「テーラーとお知り合いとか言ってましたね。ど、どこか紹介いただけませんか」
試された感性
そんなこんなで悠の下へ来ることになった池端でした。
到着した彼は、あるスーツに身を包んでいました。
悠の見立てが始まります。
スーツはモード系で、一般的なサラリーマンが着るような
ねずみ色ではなく、おしゃれなミディアムグレーで2つボタン。
白レギュラーカラーシャツに細身のスリッドタイ。
靴は黒のロングノーズプレーントゥ。
既製品ですが全体的にスマートな装いです。
しかし着ている池端は浮かない顔です。
実はこの装いで例の会議に赴いたところ不評を買ってしまったというのです。
悠も確かに付け焼刃の着こなしだと指摘します。
まず池端の体格はケメ子が言った通り
和服向きであっても決して洋装向きではありません。
スーツの襟は本来隙間ができてはダメなモノ。
しかし極端ななで肩と華奢な骨格のせいで、
まるで和服の「抜き衣紋」になってしまっています。
和装ならば艶やかなり粋なり見えるのですが、スーツでは野暮。
体格が貧相に見えてしまうのです。
悠も同意して、だったら無理にスーツを着ることは
ないのではと疑問を呈します。
しかし池端は「細かいことが気になってしまう」と拒否。
生け花は枝一本、葉一枚で大きく変わってしまうもの。
色々な所で細かいところが目につく性分のために、
洋風の場で和装の自分がどうしても違和感があるのだそうです。
と、ここで視線を落としていた練り切りに言及。
朝顔を模した菓子に味気ない白い皿はもったいないのでは?
…急に出された菓子に文句をつけ始める池端。
これは確かに細かい性格です!
しかし悠はあっさりと、
その皿が神前に菓子を備える「嘉祥菓子」を再現している老舗の良いものと返答。
嫌ならば根来塗のものに取り換えるが…。
との言葉に、「なかなかお出来になる」と冷や汗の池端。
どうも洋装のテーラーに、
家元の苦労や美意識はわかるまいというおごりが見えていますね。
傍から見ていた女子達も、これにはドン引き。
ですが先方はもっと細かく、
装いを改めなければこの話はナシにするとの宣言をされたというのです。
次の会議は10日後。到底他の店では間に合いません。
急ぎ取りかかる必要があります。
家元の希望を聞く悠。
すると池端は
「洋風の世界にも新境地にも求めたいので華やかなものを」
との注文をします。
「一旦お帰りください」
悠の返答はすげないものでした。あっけにとられる池端。
細かい気配りをする池端にはらしくない注文だというのです。
それは自分の感性に問題があるということか?
とプライドを傷つけられた池端は気色ばみますが
「一晩経ってもご希望が変わらないなら承りましょう」
との言葉に、肩を落として帰路についてしまいます。
貫禄のスーツ
とぼとぼ帰る池端。
なんで請けてやらなかったのか?とのケメ子の問いに
悠は「生地に鋏を入れちまったら取り返しがつかないからさ」
と語ります。
抜き衣紋は抜きすぎても抜かなすぎても野暮ったく見える繊細なもの。
和服を日ごろ着ている華道の先生が大雑把な注文をしてきたのがいけなかった。
仕事の幅を増やそうとやっきになるのはわかるけれども
大事なことを「仕事だから」と見逃してしまっている。
悠は池端に考える時間を作ってやりたかったわけですね。
一方、池端はまた家で荒れに荒れていました。
「僕の感性の全否定」だと怒っています。
しかし弟子たちにどうせ一晩の辛抱だから冷静に諭された池端は
無心になる為にお道具の前に座ります。
花器を並べ、丁寧に持ち上げた瞬間…。
彼の中で何かが閃いたようです。
翌日、彼は再び悠のもとをスーツで訪れました。
「恐れ入りました」と始まる彼の述懐。
それは「アートの主役はあくまでも作品」という悟りです。
当たり前のことですが、
昨今の派手なセルフプロデュースありきのイベントごとの前では霞やすい真理でした。
地味な花器に華やかな花…ならばともかく、
豪華な飾り壺に花を生けるのは野暮の極みです。
大切な信念を無下にしてしまったことを恥じる池端は
遂に自分に相応しいスーツを見つけたようです。
いくら地味な器がいいといっても貧相ではだめ。
だから和服しか似合わないこの体に、
少しでも貫禄が出るスーツを仕立ててくれ――。
この答え、悠の待ち望んでいたもののようでした。
笑顔で承ると、大幅な改善案を練ります。
白シャツはセミワイドに、
ネクタイはネイビーに白のドット
白麻チーフに、黒のプレーントゥ。
極めつけは「スリーピース」。
ベストもしっかりと着こむ形を提案します。
夏場ということあって不安な池端に
まず体の厚みを出すのが主目的で、
単なるシャツ姿より高級感が出るとの説明を受けて納得します。
迷いなくスーツに鋏を入れていく悠…。
当日。作品を見て、中々好感触のお偉方の前に現れた池端。
悠に仕立て直されたスリーピースを着て、
自信ありげに立っています。
悪くはないが、アートの世界では地味かな?
との評価をする一同ですが、「重鎮」の言葉で空気は変わります。
いわく、あの極端ななで肩に似合う既製品はない。
あれはナポリの熟練の職人による技だと見抜いたのです。
生地にアイロンで扇型に癖をつけ、それに逆らう形で裁断し上衿を作る。
この技術で、蔓草のように首に沿う襟が作れるのだと語ります。
こんなスーツを用意する美意識を褒め称えます。
上着を脱いだベストスタイルでの作業も鮮やか。
これをきっかけに彼は急速に売れっ子になっていきました。
「世界の池端」も夢ではないのでは?
と豪語するほどその知名度はうなぎのぼり。
一方華道の授業はおばさん講師に変わってしまい、
生徒のやる気がダダ下がりだと智坂はげんなり。
悠はポツリと一言。
「下手な三味線に踊らされなければいいけどな」
…彼の懸念は当たりました。
ある仕事でどうしても電飾などで映えるようにしろ!
と強要されて折れることができず…。
結局クライアントがしくじって戻ってきてしまった
ようです。
投げやりに講師を再開する池端…。
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王様の仕立て屋~下町テーラー~の最新話『23話』の感想と考察
驕れるものは久しからずとも言いますが、
まさに三日天下並みの隆盛ですね。池端。
まあ才能は本物なので、
自分の好きな仕事ができるようにまた努力するほかないのでしょう。
今回も相変わらず悠の見立ては抜群でした。
しかしさすがに「成功したその後」は支えてやることが
できないわけです。
ひょっとすると池端流はこんな感じで細々やっているのが
向いていたのかも知れないですね。なんとも悲しい話ですが。
しかし日本人の華奢な骨格に沿うような裁断方法が
あったとは驚きでした。
イタリア人も諸外国と比べそう立派な体格というわけでもないですが、
アジア人でもスーツは着こなせるという好例でしたね。
まとめ
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