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キングダムの最新話『610話』のネタバレ
尭雲と王賁
言葉を交わし終えた尭雲と王賁は、
少しの静寂のあと、戦いはじめた。
「尭雲様!」
「賁様!っ!」
2人の部下たちが声をあげる。
王賁も尭雲も手負いの身。
勝負は一瞬で決するだろう。
お互いの馬が駆け出す。
士気に呼応するように、
王賁の止まりかけた心臓が、
より強い音を立てて鳴っていた。
「王賁!」
すぐ近くまでたどり着いていた信の声が響く。
王賁の瞳は
強い眼光で尭雲を見据え――
そして、尭雲は、
静水のような静かさを持って、
大きくその矛を振りかぶった。
勝負は一瞬――
王賁も尭雲も、
長くは打ち合うつもりはない。
お互い、その一撃に全霊を賭していた。
ふと、
尭雲の心中に、
かつての主、藺相如の最期が浮かぶ。
介抱の甲斐もなく、
病によって倒れる藺相如。
彼は力なく笑みを浮かべると、
途切れ途切れに言葉を発する。
「二人には、まだ、役割が残っている」
「尭雲……その時は、朱き平原を、
敵の血でさらに深き朱に染めてやれ……」
藺相如は、それだけ言い残すと、
その体からは力が抜けていく。
尭雲たちが握っていた手から、
その、ほっそりとして手が崩れ落ちた。
「我ながら、これほど早く逝くとは……迷惑をかける」
「殿……」
「二人とも、あとは、頼んだぞ。中華は……」
そうして、藺相如は眠るように逝った。
どんな戦にも怯まなかった二人の武人から、
大粒の涙がこぼれ落ちる。
そして、彼らは言葉にならぬ嗚咽を漏らした。
藺相如の――主の言葉を思い出し、
尭雲は怒声をあげる。
鬼神のごとき一撃が、王賁へと迫った。
(尭雲の方が、速い!)
信が息を呑んだ。
決着
鈍い打撃の音が響き渡る。
王賁は、柄同士を重ね合わせることにより、
尭雲の一撃を受けたのだ。
(止っ……!!)
だが、三大天と呼ばれた男による、
全霊の一撃はその程度では止まらなかった。
その衝撃は槍を伝い、
王賁の骨を伝っていく。
骨が軋み、全身が震えた。
それでも衝撃は伝播し、
ついに王賁の乗っていた馬の脚を砕く。
歯ぎしりをする王賁。
次の瞬間。
王賁が尭雲の矛を払いのけた。
同時に馬の四肢が限界を迎え、
へし折れる。
そのまま、王賁はバランスを崩し、
尭雲の方へと倒れ込んだ。
しかし、それでも槍は手放さず、
王賁は尭雲の心の臓を狙う。
防御手段を失った尭雲は、その一撃を受けるしかなかった。
王賁の槍が尭雲の胸を貫く。
固唾をのんで見守っていた両軍が戦うのすら忘れ、
戦場に一瞬の静寂が走った。
落馬し、崩れ落ちる王賁。
矛を落とし、血を吐く尭雲。
ついに決着の幕が下りたのだ。
尭雲の「助言」
「おのれ王賁!死ねェ!」
忠義に厚い尭雲の部下たちが、
崩れ落ちる王賁へ向かって駆け出す。
そこに割って入ったのは信だった。
「おのれぇ!2人まとめて殺せェっ!」
「待て……」
尭雲軍を静止したのは、
ほかならぬ尭雲だった。
彼はうなだれたまま、
息も絶え絶えに言葉を紡ぐ。
「逝く前に、その二人には、
伝えておかねばならぬことがある」
尭雲の瞼の裏には、
かつて藺相如から預かっていた言葉が巡っていた。
<二つ目は――
一つ目の中華を統べる刃となる敵止めることが叶わなかった時――
その敵に対しての助言だ>
「わが主藺相如から、お前たちに向けて、預かっていた言葉だ」
その言葉に信は訝しむ。
藺相如はもう何年も前に死んでいるのだ。
そんな男が、
当時無名だった信たちに言葉を残すはずがない。
「……お前たちが本当に、
中華を一つにする刃たらんと、願うのならば」
「胸に、深く刻んでおけ」
尭雲は血を吐きながらも、
目には炎を宿したまま、
ゆっくりと言葉を続けた。
「何があろうと、必ず――」
「振り上げた刃は、必ず、最後まで、振り下ろせ」
尭雲が、胸に突き刺さった槍をゆっくりと抜く。
もう助からないことは、彼自身にもわかっているようだった。
それでも、いや、だからこそ穏やかに、
彼は「自分自身の言葉」を呟く。
「中華の応えに近づく日が、来ることがあれば、
多くの意味がわかる……」
「本当は、藺相如様こそがその応えを導くお方であり、
そのためなら、この命、
真っ先に燃やし尽くす覚悟であったが――」
「結果として、わが主には……
誰よりも長く仕えることとなった」
尭雲が胸から槍を抜き去る。
彼の頭の中に、
かつての思い出が巡った。
仕え初めのころ。
少年時代。
反目しあった時。
そして、最高の主との思い出――
(フッ、それは、それで……)
尭雲が首を下げ、うなだれる。
最後まで膝をつくことはせず、
馬上に鎮座したまま、戦死していった。
藺相如の遺言を伝えた今、
彼はすべての役目を終えたのだ。
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以上がキングダムの最新話『610話』のネタバレでした!
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キングダムの最新話『610話』の感想と考察
ついに尭雲との戦いに決着がつきましたね!
王賁と尭雲が打ち合うときの見開きは、
とても見応えがありました!
また、尭雲が最期まで余裕のある態度を崩さなかったのは、
三大天のカリスマを遺憾なく発揮していたと思います。
さて、尭雲が戦死したので、
信や王賁にいる左翼はほぼ勝ったも同然といっていいでしょう。
ということは、今後、信たちは王翦たちに援軍へ行くことに
なるのでしょうか?
それにしても気になるのは、
藺相如の言葉ですね!
彼の言葉は今まで完全に伏線となっているので、
信たちが「迷う」ときがいつか来るのかもしれません。
史実通りであればこの戦いに勝つことになるのですが、
そこにどんなドラマが脚色されるのか、とても楽しみですね!
まとめ
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